青麗_創刊号_お試し版
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凍蝶のはねひからむとしてゐたり正子『花実』平成九年作。中七に漢字を当てると「翅光らむ」となる。「翅」1 書きを選んだ句である。実はこの句は、句会当日に唸りながらの昆虫っぽさにも「光」のきらめきにも気持ちが添わず、かな詠み落としたときには「はねひらかむ」だった。朝の日が射し入れば凍蝶のはねもゆるんで開き始めるだろう、の心で。句会でも何点か入ったのだが、その最初の人が誤読し(てくださっ)た。「はねひからむ」と耳にした瞬間、目からも耳からも鱗が落ちたことはいうまでもない。ありがたき誤読者は長谷川櫂さん。句会の恩恵を賜って成立した一句である。※第一句集『玩具』と第二句集『花実』の前半から、 思い出の一句を取りあげて自註します。

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